僕の住んでいる町は、春になると、街の至る所で桜やら、菜の花やら、そのほか、たくさんの花が咲き、冬のモノトーンの世界を一新するかのように、町中がパステルカラーで溢れます。僕の職場の近くの公園の桜もきれいで、この時期は通勤が楽しくなったりします。近くに流れる川辺には菜の花と桜が川に沿って咲いており、青空と、光を反射して銀色に光る川と、黄色とピンクの花を一望できます。色とりどりの春は、まさに新年度を迎えるにあたりふさわしい季節です。
新年度の始まりは、入学式、入社式、歓迎会などイベントが盛りだくさんです。桜の木の下でお酒を飲んだり、ようやく暖かくなってきた夕方に、新入社員を連れてはしごしたり、なにかと、春とお酒は関係が深いです。そのせいなのか、僕は桜や沈丁花(ジンチョウゲ)の香りを嗅ぐと飲み会を想像してしまいます。桜の花の香りは会社の花見、沈丁花の香りは大学の頃の飲み会という感じです。花の香りなのだから、花を想像するのが普通な気がしますが、こういった香りに関連した過去の記憶の方が連想されてしまうのです。そのため、香りには、なにか記憶を呼び覚ます効果があるのではないかと思っていました。
香りから過去の記憶を呼び覚ます他の例として、昔付き合っていた女の子がつけていた香水があります。人とすれ違う時など、なにかの拍子にこの香りが匂ってきた時、当時のことが思い起こされることがあります。それは、感情や場面といった当時その香りに伴っていた記憶を思い起こさせたり、香りがすでにその個人の象徴となり、直接個人を連想させたりします。このように、香りは過去の感情やイメージなどの記憶を呼び覚ます性質があると思われます。
僕は経験上、こうしたある特定の記憶を呼び覚ます刺激として、5覚(視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚)の中でも特に嗅覚が顕著であるという気がしていました。この春も、いつも通り香りによっていろんな記憶が思い起こされましたが、これをきっかけにちょっと調べてみることとしました。
Googleで検索したところ、この香りについて研究している学者がいました。彼女の名は
Rachel Herzです。Brown大学において、次のようなテーマを研究しています。
「臭いによって呼び覚まされる記憶は、他の記憶と比較してどの程度感情的に特有か」
「感情は嗅覚にどのような影響を与えるのか」
「どのように臭いは感情に条件づけられ、引き続き動機づけれた行動に影響を与えるのか」
また、彼女の出版した本『
The Scent of Desire』では、以下の事について書かれています。
・香りのメカニズム
・感覚器官の主な役割
・味、臭い、風味の関係
・すべての感覚における香りの優位性等
この本を読めば、僕の好奇心はかなり満たされるのだろうと思います。
この本の紹介サイトにおいて、内容について触れてある記事があったので、そこから興味深い記事を抜粋してみました。
1.「嗅覚神経を伝って伝えられる嗅覚器官の強い刺激に伴い、たいていの臭いは三叉神経を刺激するので感情を伴う。」
原文:"Besides the strictly olfactory stimuli that are transmitted through the olfactory nerve (CN I), most smells also have a "feel" to them that stimulates the trigeminal nerve (CN V)."
2.「私たちは、写真や記録よりも香を、思い出せない人を思い出すために使っている。意識的に認識することよりも、家族や友人を香りで識別している。」
原文:"We often use scents, more than photos or recordings, to recollect people who are absent from us. We recognize family and friends by smell more than we consciously realize."
訳は変ですが、あしからず。
まず、1についてですが、臭いは知覚される際に、感情をつかさどる神経を刺激するということだと思うのですが、こう考えると、これまで僕が感じていたことが腑に落ちます。つまり、臭いと感情は同時に記憶されるので、臭いによってこの感情も呼び覚まされるのでしょう。そのため、嗅覚器官は他の感覚器官よりも、感情を伴うイメージを呼び起こしやすいのだと思います。
2では、普段の生活の中で、無意識のうちに臭いを判断材料として使用しているということだと思います。臭いの役割が思っていた以上に大きいものであると思いました。犬の嗅覚は人間の数千から数万倍敏感であるといわれており、臭いを頼りに行動していることは容易に想像できるのですが、人間がまさか臭いで人を識別していることはなかなか想像しにくいですよね。でも、特定の香水やあるいはたばこの臭いから特定の人を想像したことはあると思います。そのため、あながちおかしなことではないのだと思います。
解釈も不安ですが、あしからず。
時間があれば本も読んでみたいです。